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斜陽の米地方紙:シカゴトリビューンの苦悩

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もう会社に残っているのは20代の若手と50代の古株ばっかりだ。働き盛りの記者は『こんなところにいつまでもいられない』って言ってみんないなくなってしまった。

ちょっと耳を疑った。これは僕の古巣の日本の地方紙の話じゃない。シカゴトリビューンのベテランビジネス記者Ameet Sachdevさんが思わず口にした本音だった。

アメリカの新聞経営は近年厳しさを増している。収入の7〜8割を広告に頼る構造だったのが、Claigslistの登場で三行広告を根こそぎ持っていかれ、さらにリーマンショックが追い討ちをかけた格好だ。今は各社必死で講読料収入を増やそうとしている。

学生たちにビジネス報道の現場について語ってほしいーという依頼を受けて教室を訪れたAmeetさん。口をついて出たのは、斜陽の時期を迎えた地方紙の厳しい現実だった。

オンラインに力を入れ始めてから、毎日ノルマみたいな形で記事を出さなきゃいけなくなった。締め切りは24時間。給料はまったく増えないのに。


今、会社が力を入れている戦略はサバーブ(郊外)の読者獲得。シカゴ市民に比べて彼らは新聞に対して忠誠心が高いから。

トリビューン紙のビジネス報道は微妙な立ち位置にいる。アメリカのビジネスマンはthe Wall Street JournalBloombergといったB-to-Bメディアを読む。かといって普通の人々を読者に想定しても、B-to-Cのローカルビジネス報道はニーズがほとんどない。

実はシカゴにはマクドナルドやボーイングキャタピラーといったグローバル企業の本社がけっこうある。シカゴ商品先物取引所(CME)という世界最大の先物取引所もある。

でも、トリビューンはもはやCMEを定期的に取材していない。「先物取引の取材は難しすぎる。そんな人員もいないし、僕らの領分を越えている」(Ameetさん)からだ。

地元大手企業の四半期決算報道についても、「全部はカバーできない」とかなりの量を切り捨てているそうだ。どうやって効率よく対応していくか検討している最中という。

ビジネスの編集部は人を減らされている。こないだも1〜2人辞めていなくなった。補充してもらえることを期待しているけど、いったいどうなることか…

かつてシカゴトリビューンはアメリカを代表する地方新聞だった。系列紙にはロサンゼルスタイムズもある名門だ。そこで働くことを目標として、ジャーナリストが転職を繰り返し、何年も掛けてやっと辿り着ける憧れの場所だったはずだ。

輝きを失い、人材の空洞化が進むかつての名門地方紙。日本でもいったいどれだけのメディアが本当に価値がある情報を提供できているのか。差別化に失敗した情報媒体がいずれたどる道を見た思いがした。

ツイッターを見ていると、ニューヨークとかワシントンDCとか、東海岸のオンラインジャーナリズムの仕事はたくさんあるみたいだよ。そっちを目指した方がいい。

 Ameetさんの最後のアドバイスは米国メディアの趨勢を如実に示していた。